仕事の悩みを解消するとき、最新の自己啓発書に目が行きがちです。しかし悩みの本質は昔から変わらず、古典の作品でもその教えは悩みに響きます。ビジネス書で定番と言われている自己啓発書は海外の作品が多いですが、日本の古典作品にも良い作品は沢山あります。そこで今回は、働き方・生き方が学べる日本の古典作品を5冊紹介します。一度は聞いたことのあるタイトルかもしれませんが、じっくり読めば見えてくるものがあります。
学び続ければチャンスはやってくる
現代語抄訳 言志四録
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言志四録とは、江戸時代1772年生まれの儒学者佐藤一斎が40数年にわたって書いた、「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録」の総称です。指導者のための指針として長年読み続けられ、西郷隆盛にも愛読していました。2001年には内閣総理大臣だった小泉純一郎が衆議院で引用し、一時注目も集まりました。
この本はそんな言志四録の現代語訳と解説が掲載されています。言志四録の基本の考えは儒学ですが、当時の日本に合うように解釈され書かれているので、すんなりと言葉が沁み込んできます。「太上は天を師とし、其の次は人を師とし、其の次は経を師とす。」「立志の功は、恥を知るを似って要と為す。」など、短い1文なので、記憶にも残りやすいです。
教訓は指導者のための指針のため、新入社員の時に読んでもピンとこないことがあります。しかし上に立つ前から心構えとして実践していれば、働き方が変わり昇進のチャンスもめぐってくるでしょう。
パフォーマンスを発揮するために体の管理
養生訓
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養生訓とは、儒学者貝原益軒によって1712年に書かれた健康のための指南書です。著者が83歳の時に本なったものなので、年齢に合わせてやるべきことが分かります。現代のような医療技術の発達していない当時の、実体験を元に健康に過ごすための秘訣は、薬に頼りがちな現代人の生活習慣改善に役立ちます。
現代語訳されたこの本では、総論の生活全般についてから始まり、飲食や薬の飲み方、老後の介護問題まで対策が示されています。心の問題にも触れ、「心気を養う養生術」や「心は楽しく身は労働」などの節があります。当時の一般庶民が実践できるように、簡単で具体的な方法なので、すぐにでも試すことができます。
若い内は多少の無理はできるかもしれないけれど、いつか限界がきて最悪の事態が発生するかもしれません。仕事で成功をするには、働ける体であることが前提条件です。年金がもらえるまでの年齢も上がり長く働く必要があるから、若い内から養生の術は学んでおいたほうがいいです。
兵法の極意にはビジネスの秘訣が満載
五輪書
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五輪書は、日本で一番有名な剣豪宮本武蔵によって書かれたと言われている、兵法の極意を示した書です。名前の通り5つの書から成っていて、「地・水・火・風・空」の書があります。内容は「二天一流の概略」「剣術の極意」「実践に勝つための秘訣」「他流はとの比較」「二天一流の境地」です。兵法書ではあるけれど、そのアイデアは現代のビジネス社会を勝ち抜くためのヒントになってくれます。
この本はそんな五輪書に現代語訳と解説を加えた構成になっています。どれもあいまいな書き方をせず、具体的になにをすべきかを示しているので、実行するときに迷うことはないです。特に火の巻と風の巻の内容は、自分の行動の心構え、相手の行動の分析にそのまま使え、400年以上前に書かれた書なのに、本質は変わらないことがよくわかります。
宮本武蔵がたどり着いた「まよひの雲の晴れたる所こそ、実の空としるべき也。空を道とし、道を空と見る所也」という境地は、人生の生き方そのものを示しています。五輪書の解説本はこれまでに数多く出版されていますが、まずは詳しい解説が書かれたこの本から読むのがいいでしょう。
現代を生きる人への心の支え
100分de名著 2016年4月 歎異抄
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歎異抄とは、鎌倉時代後期に浄土真宗の開祖親鸞に師事した唯円という人物が、親鸞の滅後教団内で湧きあがった異議・異端を嘆いた書であると言われています。歎異抄の中に収められている親鸞の言葉には原文は短いながらも現代を生き抜く人たちの心の支えになるものが数多あります。
この本は、過去にNHKの番組で放送された番組のテキストとして編集されています。全4回で「人間の影を見つめて」「悪人こそが救われる」「迷いと救いの間で」「人間にとっての宗教とは何か」のテーマで、親鸞の教えの本質を学ぶことができます。今までタイトルだけは知っていたけれど、難解だからと諦めていた人でも、100分あれば十分読み終わることができます。
言葉一つ一つは衝撃を感じる内容になっているが、キチンと読みこなせばこれほど心の支えとなる書も数少ないです。まずは歎異抄の入門書としてこの本を活用すれば、もっと深い内容の本にもたどり着けます。
次世代に思いを伝えた遺書
吉田松陰『留魂録』
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留魂録とは、幕末の思想家吉田松陰が、処刑前の獄中で門弟のために残した遺書です。原文は僅か5千数百文字と少ないながらも、そこに込められた思いは門弟に深く根付き、倒幕に向けた行動の源泉となりました。死の直前に書かれたものだからこそ切実な文体で、これからどう生きてゆけばいいのかを問いかけてきます。
この本では、留魂録をとことん読みやすくするという宣言通り、分かりやすい現代語訳で30分もかからずに読むことができます。原文が短いため、第2部で吉田松陰が生きた時代背景を解説し、より内容が理解しやいように構成されています。吉田松陰が書き残した至誠や大和魂の行動規範は、150年以上たった今でも通ずるところがあります。
死の直前でも前向きで、己のありようを考え続けた生き方は、目的を見失いなんとなく生きている自分に活を入れてくれます。時間のない人は、原文の現代語訳を読むだけでも生き方を変えるキッカケになるでしょう。